Monday, August 12, 2013

6月11日(火) 作品: 『コレクションズ』ジョナサン・フランゼン


遅くなりましたが、11日(火)に行った第四回読書会の報告をさせて頂きます。
6月11日(火) 作品: 『コレクションズ』ジョナサン・フランゼン
参加者:5名  


はじめに、未読の参加者に『コレクションズ』の内容を伝えるというかたちで小説を整理していくという、これまでとは少し違う趣になりましたが、結果としてこの作品を語るにはとても良い手法だったのではないかという印象を抱きました。
黒板に関係図を書き、それぞれの登場人物のエピソードを話していくとかなりの盛り上がりをみせました。その理由として、この『コレクションズ』は全体に流れる大枠の物語よりも人物ひとりひとりのエピソードの方が面白いからだといえます。言い換えるなら、それぞれが問題を抱えた家族の「一員」の物語が強烈なものとして存在して、そこから大枠の物語に繋がるタイプの物語こその楽しみ方だといえるでしょう。特にランバート家の三男チップのエピソードは、かなり破格の面白さをもっており、また、父アルフレッドとの関係における繋がりの深さという点でも、ランバート家におけるチップの立ち位置には注目が集まりました。
また、パーキンソン病を患う父アルフレッド、頭の中の理想を現実に投影しようとする保守的な母イーニッド、家庭に深い問題を抱えてしまう長男ゲイリー、一見成功を満喫していそうなのに実際には問題だらけの長女デーニス、そして、大学を辞職に追い込まれ人生の軌道が大きく逸れたチップ、といった一家それぞれが抱えている問題に対して実際にあり得そうな現実感が強いとの意見をみなさん挙げていました。このような文脈で、野津さんがフジで放送しているドラマ「家族ゲーム」を引き合いに出してくれました。このドラマでは問題を抱えた家族のもとにやってきた家庭教師が問題を暴いていくのに対して、『コレクションズ』にはそのような役割の人物はいないがその方が現実的であると。実際の家庭では、問題があっても噴出することなく、だからこそ悶々とあがくことになる。その様子を正面から描き出しているからこそ、日本に住む我々でも共感のできる物語だったのではないかと考えました。
タイトルとなっている『コレクションズ』(Corrections)が表す矯正や修正といったテーマは、ランバート家の子供世代の態度の変化や、最後にイーニッドが人生を少し変えようとする箇所などに示唆されているようでしたが、直接的な「答え」として物語中には提示せず、希望として残している事がこの小説に重みを持たせているとの感想も聞かれました。
以前紹介したTIME誌の記事にフランゼンの小説は「21世紀の小説というよりは、19世紀の小説である」という言葉があり、語りについても話題は及びました。確かに「物語」がしっかりと存在しており19世紀の小説、(20世紀以前の小説と言ってもいいかもしれませんが)を彷彿とさせる部分もあるものの、随所に破天荒な展開を見せるところが、やはり現代的ではないかとい印象を抱きました。もちろん語りだけでなく、内容にも大きく影響している現代的なテーマが与えている同時代性をとても感じる作品であったように思われます。『コレクションズ』は2001年に出版された90年代後半を舞台とした作品ですが、昨年末に邦訳の出版された2010年出版の『フリーダム』は9・11以降のアメリカを舞台としていることもあり大変興味を惹かれました。
以上、毎度のことながら長文となり失礼いたしました。
次回第五回読書会ではパレスチナの作家カナファーニーの「ハイファに戻って/太陽の男たち」を扱います。日時や場所が決まりましたら後日告知を致します。



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